持続可能なアジアの水産と海洋環境を実現する国際協働人材育成プログラム AFIMA Leaders Program 令和7年度 学生成果発表会

2025年夏に、長崎大学からAFIMA Leaders Programへ短期留学したのは5名でした。マレーシアトレンガンヌ大学と釜慶大学校で学んだ成果を発表しました。それぞれの発表内容をご紹介します。
【マレーシアトレンガヌ大学に約3ヶ月留学した4名】
実習期間:2025年8月9日〜10月24日

写真左から森田善行(水産・M1)和泉匠真(水産・B4)入江優衣(環境・B2)林凛奈(水産・B4)
魚の人工授精に
観賞魚の養殖生産
海の恵みの多様性を実感

森田善行
総合生産科学研究科 博士前期課程 1年


トレンガヌ州はマレー半島の東岸に位置しており、雄大な自然が広がっています。私が留学先として、マレーシアトレンガヌ大学を選んだ理由の一つが、この自然豊かな環境に魅力を感じたからです。また、本州の住民の大部分はイスラム教徒あり、イスラム文化が根強く残る地域です。マレーシアのユニークな点は、各州に王族が存在しており、王族の代表が国の王も務める点です。我々が滞在した州にも王族がいらっしゃいました。
マレーシアトレンガヌ大学は、海洋分野に力を入れ、グローバルな教育や研究が行われてい国立の大学です。コンピュータサイエンス、水産食品、経理・経営、水産工学、などの学部があり、今回は水産学と養殖関連の学部の授業に参加しました。

最初の2週間は、台湾海洋大と三重大学の学生向けのサマースクールに参加しました。
マレーシアでは主要養殖魚であるアメリカンキャットフィッシュの人工授精を体験。前日にホルモン投与した魚から採卵し、オスからは精子を採取、受精させました。その後、胚発生も観察しました。この魚は非常に環境耐性が強く、エアレーションが無いタンクでも元気に泳いでいたのが印象的でした。

マレーシアトレンガヌ大学が所有する飼育施設を見学しました。マレーシアでは、食用魚以外に観賞魚の養殖生産も盛んであることから、多様な観賞魚が飼育されていました。また、餌料の作成方法やアクアポニックについても学ぶことができました。

マングローブ散策では、日本では見られない植物に触れることが出来ました。驚いたのは、手のひらサイズのシジミを採取したことです。その後炭火で焼いて食べました。味は泥臭くなく、非常においしかったです。
マングローブの生態や
水質の改善が育む
魚の未来を学びました

和泉匠真
水産学部 4年


授業は日本とは異なり日曜日から木曜日で、金曜と土曜が休日です。授業は座学と実習(実験)が一つの授業に含まれています。私は水質管理学とマングローブ生態学、経営学の3つの授業を履修しました。

水産経営学では、商品を企画してパッケージの考案、製品を作り販売までの流れを実践しました。5~6人の班に分かれ、「TAUHU」という伝統料理の中身をツナに入れ替えてみました。また栄養素や原材料の値段などを考えて、しっかり利益を得る仕組みを作りました。最後はこの一連の流れをポスターにして発表もすることができました。

日本にはあまり馴染みのない、マングローブの生態について学びました。マングローブの植物のたねは、ぷかぷか浮いて漂ったあと沈み地面に根を伸ばす種や、すぐに沈んで根を張る種など様々な戦略があり面白かったです。また、マングローブは塩分が非常に重要で、海水と淡水のバランスが必要な、とても繊細な植物だということ学びました。
大学内にはいろいろなマングローブがあり、先生がフィールドワークに連れて行ってくれました。色々な種があり、その種ごとに詳しい説明をしてくれて面白かったです。

水質管理学は、名前の通り水質を管理するのに重要な要素を学ぶことができました。物理的にきれいにする方法や化学的にきれいにする方法、バクテリアを使ってきれいにする方法など、色々な方法がありました。また、養殖場の水質を改善するためにどのような方法が有効かについても学習できました。さらに養殖場の水の不純物を取り除き、野菜などの水として使うことで、無駄にせずさらに栄養を循環できるシステムも。養殖が盛んにおこなわれているマレーシアでは、水質の改善がより質のいい養殖魚を育てるのに欠かせないプロセスであることを学びました。

9/25~9/28まで、ビドン島に実習に行きました。島では、主にマレーシアの伝統漁法を体験。トロールや刺し網、カゴ網などをしました。日本ではあまり見ない魚が多く面白かったです。トロールを回収するときに人力で上げるのには驚きました。刺し網ではサンゴか何かに引っかかって、ボロボロになって帰ってきました。
島では、さびき釣りをしたり、バーベキューをしたり、マレーシアのカードゲームをしたりといろいろ遊びました。海に潜ると美しいサンゴと魚が共存している世界に感動しました。
マイクロプラスチックと魚の現状を学び
人間活動と海の環境について
研究を深めることができた

入江優衣
環境科学部 2年


私は約1か月間、ラボインターンに参加し、魚の筋肉組織内に入り込んでいるマイクロプラスチックについて研究しました。市場に行き魚を購入するところから始め、解剖してKOHで溶かし、フィルタリングして顕微鏡で観察するところまで、かなり本格的な研究をしました。全ての魚でマイクロプラスチックが観察され、人間活動の影響がしっかり魚に表れていました。卒業研究ではマクロプラスチックの誤食を研究していたので、ここでよりたくさんの知識が得ることができました。
その国の文化に触れ
多くの交流と
チャレンジを続けること

林凛奈
水産学部 4年


授業や研究の合間に、みんなでクアラルンプールに旅行に行きました。バトゥ洞窟、動物園、ツインタワー、夜市、ピンクモスクと呼ばれるプトラモスク、水族館、セントラルマーケット、パビリオンという商業施設などを観光。トレンガヌはムスリムの割合が多い地域だったため、ヒンドゥー教や仏教と様々な文化が混在しているクアラルンプール社会を感じることができました。自然多いトレンガヌと建造物が多いクアラルンプールが本当に同じ国なのかと思うほどでした。

マレーシアで食べた物でおいしかった物を並べてみました。ナシゴレンは種類が豊富で毎日飽きることなく楽しめ、かき氷屋やアラブ料理屋もあって、日本ではなかなか食べられない料理にチャレンジしました。マレーシアの料理がとても辛い分、飲み物の甘さで中和させているように思います。

研究はもちろんですが、異国の地を訪れたならば、新しい味や食材などその国の文化に触れ、どんどんチャレンジしてみてください!
【釜慶大学校に約4ヶ月留学した1名】
実習期間:2025年8月29日〜12月20日

自分の中で最も変化したのは
「尻込みせずに挑む姿勢」
多くの出会いに感謝

田中 然大
水産学部 3年 海洋未来創生コース

私が参加した「Capstone Design」の授業では、海洋・水産分野における課題を自ら設定し、チームで議論を重ねながら解決策を導き出し、最終的に発表を行いました。国際的なイベントへの参加や、チームでのプロジェクト発表、交流の機会もありました。専門知識だけでなく、異なるバックグラウンドを持つ学生と協働する中で、課題の捉え方や議論の進め方の違いを実感しました。特に印象に残ったのは、自分の意見を持つことと同時に、相手の視点を理解しようとする姿勢の重要性です。専門知識以上に、国際的な場で学ぶ意味を感じた授業でした。


「持続可能な水産市場論」のでは、水産物に限らず食品を開発、加工、流通するまでにどのようなアプローチを行えば、消費者の販売意欲を促進できるかについて学びました。特に、水産食品流通におけるマーケティング戦略や、国際的な市場動向を扱う内容は、自分の専門である水産経済への関心をさらに深めるきっかけとなりました。また、この授業は英語で行われたので英語での発表や、多国籍の学生との意見交換を通して、自分の考えを言語化する難しさと重要性を実感しました。理論を学ぶだけでなく、それを他者に伝える過程そのものが、大きな学びとなりました。


このほかに水産に関連する授業の他に韓国語の授業、留学生に向けておこなわれる異文化理解の授業も履修しました。また韓国の学生にむけて開講された養殖の授業では、その早さと難易度に苦労しましたが、日本との対象魚種、養殖方法の違いに関して「深く学ぶことが出来たと感じました。
同じ水産学という分野であっても、扱われ方や語られ方、現場との距離感は国や地域によって異なります。その違いを、共有し、相手方の考え方を尊重しながら自分の意見を伝え、その中で合意点を見つけていくことが重要であると感じました。日本で当たり前だと思っていた考え方や前提が、自分の中から発信されたときどのようにふるまうのか、どのように影響していくのかを一度立ち止まって捉え直す姿勢が身についたと感じています。
【学んだこと】
日本との違い チームプロジェクトの多さ、アウトプット、インプットが多い。
自分の考えや立場を共有しつつ、進めていく。
消費と需要の関係を多角的に捉える視点を習得
日本で学んだ理論・制度を異なる文脈で考える経験を得た
自分の専門知識がまだ断片的であることを認識
理論と現場、数字と人を結びつけて理解する必要性を実感

乗船実習に乗って、済州島に1週間滞在しました。プギョン大学のもつペクギョンホという実習船で、長崎丸よりも大きく非常に立派な船でした。船内の案内では、機関室の見学、機関長の方のお話から始まり、デッキでの航海士の方々のお話まで非常に有意義な時間でした。

船内では、日本人は私ひとりだったため、韓国語または英語のみで会話を行いました。同室の方たちは皆さん優しく、うまくコミュニケーションをとれない中でも楽しく過ごすことが出来ました。済州島は、韓国の南に位置する島で、火山活動によって形成された自然地形や、海に囲まれた独自の暮らしが特徴的な地域です。本土とは少し違う空気感や地域性があり、同じ韓国の中でも地域によって文化や生活のリズムが違うことを体感できた点も印象に残っています。上陸後は班に分かれ観光名所を回ったり、済州島生まれのソジュであるハンラサンや名物のタチウオや黒豚、を食べたりしました。また、韓国水産資源公団にもお邪魔し、職員の方たちとともに、風力発電所への見学も行いました。最終日には班ごとに撮影制作した、短編動画の視聴をしたり、交流会を行ったりなど有意義な乗船実習でした。

1週間、プギョン大学の研究室にインターンシップ生として所属させていただきました。この研究室では、エビの補償成長に関する実験が行われていました。活動としては、水質検査など基礎的なことから始まり、補償成長に関する器官の解剖などを体験。またプギョン大学のもう一つのキャンパスである龍谷キャンパスでは、餌料の開発がおこなわれており、その様子を見学させていただきました。3学年ということもあり、海外の研究室の様子を体験でき、具体的な研究への実感を持つことが出来たと思います。

日常生活の中で、一番感じたのは言語の成長です。特に韓国語では、相手との関係性や場面に応じた表現が重要であり、単に文法的に正しいだけでは十分ではありません。日々の買い物や移動、簡単なやり取りの積み重ねが、言語への理解を少しずつ深めてくれたように思います。また中国、マレーシア、ミャンマー、ヨーロッパ圏の方たちとも交流をしましたが、共通して重要だったことは「自分の考えを持っていること」と「相手の話を聞こうとする姿勢」の大切さでした。積極的に話すことが必ずしも正解ではなく、相手の意図を汲み取ろうとする姿勢そのものが、信頼につながる場面も多くありました。講義だけでなく一緒にご飯を食べたり、遊んだりそのような時間の一つ一つが自分の中で新しく、かけがえのないものになったと考えています。

今回の留学を通して、自分の中で最も変化したのは、「尻込みせずに挑む姿勢」だったと思います。言語や専門分野だけに限らず日常生活においても、曖昧な理解のまま進むと、必ずどこかで行き詰まるという経験を何度もしました。そのため、分からないことや挑戦してみたいことがあったら、困難でも気持ちがあれば進んで行動する意思を持つようになりました。一方で、課題も多く残っています。
特に、専門的な内容を外国語で正確に説明する力は、まだ十分とは言えません。今後は、語学と専門を切り離さず、同時に深めていく必要があると考えています。
今後の学業においては、水産学の基礎を改めて固めつつ、経済や地域政策といった分野を横断的に学びたいと考えています。
今回の留学で得た視点を活かし、日本と韓国、あるいは地域と国際社会をつなぐ形で、水産を捉え直していきたいです。
このような貴重な経験を与えてくださった先生方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

発表会の最後には、研究科長の河本和明先生から挨拶がありました。「みなさん、素晴らしい発表をありがとうございました。多くの研究を行ってきたのだと理解できました。派遣期間の中で、もっと英語を学びたいという希望や、もっと長い期間実践的に学びたかったという意見もありました。このプログラムは、今回で一端終わりますが、これからも交流を続けていただき、もっと多くの経験を積んでもらいたいと思っています。今日はありがとうございました。」